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慎也 齋藤

ひまわり月報4月 自己決定の限界について

 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 この前テレビで、「自殺は、犯罪ではないので、悪いことではない。」という話をしていました。それで、「自殺は、犯罪ではなく悪いことではないのか。」検討させてください。

 まず、「犯罪とは何か?」ということです。刑法という法律が、どのような行為が犯罪となるか定めています。そのため、犯罪とは、形式的には、人の行為のうち刑法で犯罪と明記され一定の刑が定められているものです。実質的には、人や社会や国に対して一定の害を生じさせる行為、「法益を害する行為」が犯罪とされています。そのため、「犯罪とされている行為は、法益を害する行為である。」とは言えそうです。

それでは、最初の質問に戻ります。自殺が犯罪とされていないことは確かです。ただ、人の自殺を助ける行為については犯罪とされています(自殺関与罪)。そうすると、自殺も法益は害するようです。

 では、自殺も犯罪でしょうか?これは違います。法益を害するとしても刑が定められていなければ犯罪とは言えません。どうして刑が定められていないのでしょうか?自殺した人はもういないので、処罰できないからです。つまり、自殺は法益を害する行為で悪いことだけれど、処罰できないから犯罪ではないのです。

この説明に対して、「自殺関与が犯罪とされているのは、自殺が法益を害するからではなく、人の自殺を助ける行為が法益を害するからだ!」という意見もあります。ただ、私は、社会や国家にとって、人の命の重さは、自分の命でも他人の命でも変わらないのであり、その命を害することは同じように重大な法益侵害であると考えます(命は自分で処分できないとする立場)。

 弁護士は、人の代わりに人の利益のために活動する職業です。ご依頼いただけることはとても嬉しいですが、「その人のため」と頑張ってお仕事しますから、勝手ながら誰にでも「長生きしてほしい。」と思います。人を大事にするとしても、「自分も大事に」でお願いいたします。まずは、ご相談ください。


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