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広瀬通月報

 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 弁護士という仕事をしておりますが、「裁判しましょう!」という結論になることは、そう多くありません。

 法律には、この社会に生きる皆さんの権利が多く定められています。ただ、「あなたの権利はこれです!」とはっきりは書かれていません。具体的には、裁判所で確認してもらわなければなりません。法律に定められた権利を、あなたが行使できるかどうか、裁判所で判断してもらわなければなりません。

 裁判所での裁判官による判断は、様々な事情を比較検討してされるものです。日本の裁判が、地裁⇒高裁⇒最高裁と、3回判断される可能性を認めているとおり、判断する裁判官や、判断される時機によって違う結論がでることもあります。そのため、私は、悩んでいる人の話を聞いて、「これは、行けそうだな!」と思っても、「絶対大丈夫です!!」とは、絶対言えません。

 人は、利益よりも損失に大きく反応するそうです。「コインを投げて、表が出たら110万円もらえますが、裏が出たら100万円とられます。」という賭け事に応じる人は、あまりいないそうです(表が出たらもらえる金額が150万円でも、100万円失うリスクに尻込みして、あまりいないそうです。)。そうすると裁判も、上手くいけば裁判に勝って希望したとおりの利益を得ることができますが、場合によっては裁判の費用や時間だけがかかってしまうという面があり、なかなか裁判をしようという気持ちにまではなれないということも理解できます。また、裁判の場合、費用や時間だけではなく、裁判所に行くことはまだ日常的なことではないので、自分の生活が裁判を始めることで変わってしまうのでは?という不安もあるでしょう。

 非日常的なリスクに対しては、保険があります。そして、自動車保険の弁護士特約のように、何かあったときに弁護士への相談や裁判等の費用を肩代わりしてくれる保険もあります。保険の制度などによって、もっと裁判所が日常的なものとなり、気軽に、弁護士や裁判所を利用できる社会になればいいですね。


 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 “破産て何だろう?”のその2として、元々平等にお金を返してもらうための制度だった『破産』に、『免責』という制度が昭和27年に加えられたことにより、どう変わっていったか説明します。

 “その1”で説明したとおり、破産手続は、そもそも債権者が自分の権利を確保するために利用する制度でした。破産手続開始時の債務者財産を債権者間で公平に分配するための制度です。債務者が会社の場合には、破産手続開始は会社の解散事由なので、会社の法人格は消滅し、借金も消滅します。それに対して、債務者が自然人(会社でない普通の人)の場合には、破産手続が終了しても、その財産で返せなかった分の借金は、そのまま残ることが基本です。ただ、破産した人にとって、借金がそのまま残ることは、破産法の趣旨であるところの“経済的再生”の妨げになります。なので、破産手続に誠実に取り組んで、債権者に自分の財産からできる限り返済した債務者については、責任を免除することにしようと定められたのが、『免責』という制度です。

 そのため、債務者が、金融機関に対してはお金を返さないのに、友達には返すという債権者間の公平に反する行為をしたような場合には、破産手続に誠実に取り組んだと認められず『免責』されないことがあります。また、収入に不釣り合いな買物をした場合も、生活における不誠実性の典型例として『免責』が認められない場合があります。

 以上のとおり、破産が認められたとしても、必ず『免責』が認められるわけではありません。『免責』は、誠実な債務者に対する特典であるという考え方と、誠実な債務者の経済的再生のための手段であるという考え方がありますが、どちらにしてもお金を借りている人は、お金を貸してくれた人のために、誠実な態度で、破産手続に真摯に取り組むことが『免責』の前提となります。

 『免責』は、破産手続に誠実に取り組んだ破産者に対してだけされるもののため、「『破産をする』とは借金を返さなくてよくなることである」とか、「『破産をする』ことは、借金をしている人の権利である」と考えている方がおられますが、それは間違いです。法律上、「お金がなければ『破産』によりお金を返さなくてよくなる」などという定めはありません。『破産』という手続に誠実に、真剣に取り組んだと認められたとき、はじめて、『免責』として「それ以上借金を返さなくてもいいですよ」と認められるだけです。法律は、「人の権利を守る」「人の権利を実現する」ということを目的としているので、「そう甘いものではない」ということは意識した上で、借金のご相談にお越しください。お金を貸した人が、あなたに対して権利を持っていることも確かですので。

 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 後志では、東京にいたときには聞いたことがない相談を受けることがあります。「隣の家の屋根から落ちた雪で被害が出たので、(又は出そうなので)どうにかしてほしい。」とか、「隣の家から、『あなたの家の屋根から落ちた雪で被害が出たので賠償しろ』と言われて困っている。」という相談です。雪国特有の問題でしょう。

 法律では、建物を利用している人、管理している人が、管理保存に問題があって、隣の家に損害をあたえたのであれば、その損害について責任をとることとなっております。

では、その建物を利用している人も管理している人もいなかったときは、どうでしょう?このときは、建物の所有者が責任をとることになっています。

民法は、以上のように建物の利用・管理をしている人(占有者)、さらには所有者に、故意・過失を問題とせずに重い責任を課しています。ただ、占有者も所有者もいないときは、どうなるのでしょう?

 1つには、建物の利用・管理をしていた人がそのまま責任を負うことが考えられます。建物を利用・管理していていた人や、建物の所有者が亡くなり、その相続人が相続放棄をした場合も、相続人は、法律で、他の人が管理を始めることができるまで管理を継続しなければならないとされています。

 ただ、この管理は、一種の事務管理で、建物の価値の維持保全が目的なので、周りの人に対する責任を根拠づけることはできないという考え方もあります。

 最後は少し難しい話になってしまいましたが、誰も利用・管理していない建物の場合、その建物の屋根から雪が落ちたとしても、誰も責任を負う人がいないということもあり得るので、そんなあやしい建物が近くにある人は、ちょっと気を付けてくださいということです。


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