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広瀬通月報

 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 この前テレビで、「自殺は、犯罪ではないので、悪いことではない。」という話をしていました。それで、「自殺は、犯罪ではなく悪いことではないのか。」検討させてください。

 まず、「犯罪とは何か?」ということです。刑法という法律が、どのような行為が犯罪となるか定めています。そのため、犯罪とは、形式的には、人の行為のうち刑法で犯罪と明記され一定の刑が定められているものです。実質的には、人や社会や国に対して一定の害を生じさせる行為、「法益を害する行為」が犯罪とされています。そのため、「犯罪とされている行為は、法益を害する行為である。」とは言えそうです。

それでは、最初の質問に戻ります。自殺が犯罪とされていないことは確かです。ただ、人の自殺を助ける行為については犯罪とされています(自殺関与罪)。そうすると、自殺も法益は害するようです。

 では、自殺も犯罪でしょうか?これは違います。法益を害するとしても刑が定められていなければ犯罪とは言えません。どうして刑が定められていないのでしょうか?自殺した人はもういないので、処罰できないからです。つまり、自殺は法益を害する行為で悪いことだけれど、処罰できないから犯罪ではないのです。

この説明に対して、「自殺関与が犯罪とされているのは、自殺が法益を害するからではなく、人の自殺を助ける行為が法益を害するからだ!」という意見もあります。ただ、私は、社会や国家にとって、人の命の重さは、自分の命でも他人の命でも変わらないのであり、その命を害することは同じように重大な法益侵害であると考えます(命は自分で処分できないとする立場)。

 弁護士は、人の代わりに人の利益のために活動する職業です。ご依頼いただけることはとても嬉しいですが、「その人のため」と頑張ってお仕事しますから、勝手ながら誰にでも「長生きしてほしい。」と思います。人を大事にするとしても、「自分も大事に」でお願いいたします。まずは、ご相談ください。



 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 離婚どころか、結婚したことも、結婚する予定もまったくない私の検討では役者不足な気もしますが、今回は結婚と離婚について検討します。

離婚について相談を受けることがよくありますが、離婚も結婚と同様、『離婚したい!』⇒『離婚する!』というように簡単なものでないことにご注意ください。

結婚の場合は、皆さんも、『結婚したい!』⇒『結婚する!』と簡単なものではないことご存じのようです。婚姻は、「届け出ることによって・・・効力を生ずる」とされますが、「当事者間に婚姻をする意思がないとき」は無効とされています。すなわち、2人が『結婚したい!』⇒『結婚する!』という意思を持っていなければ結婚できません。

離婚の場合も、2人が『離婚したい!』⇒『離婚する!』という意思を持っていれば離婚できます。結婚と同じように、2人で届出をすれば原則として離婚が成立します。

ただ、夫婦の一方だけが『離婚したい!』というときは、ハードルがとても高くなります。ただ、結婚のときと異なり『2人でなければ絶対にできない!』わけではありません。『もう夫婦としての実態がない』と言えれば離婚できます。

では、どのようなときに、『夫婦としての実態がない』と言えるのでしょうか?裁判所は「夫婦としての実態がない(婚姻関係の破綻)」となかなか認めません。例えば、夫が「口論した挙句、殴打し足蹴にするなどの暴行を加え、加療約10日見込みの傷害を負わせた」という事案でも、「同情の余地がないとはいえない」「別居後3年に満たない」「夫は婚姻の継続を強く希望している」として破綻を認めません(千葉地裁)。「怒鳴りながら手元の物を叩くなどの暴言暴力やモラルハラスメントにより妻がめまいで緊急搬送された」「全般性不安障害と診断を受けた」という事案でも、「いずれも、生活・考え方の違いや感情・言葉の行き違いに端を発するもの」なので「夫だけが責任を負うものではない」「夫は妻との関係修復を強く望んでいる」「別居期間が約3年5か月と短い」として破綻を認めません(東京家裁)。どちらも控訴審(東京高裁)では、長く裁判したので別居期間も長くなり破綻が認められましたが、DVがある事案でもここまで争わなければいけないのですから大変です。モラルハラスメントだけでは、もっと大変です。

 「結婚」や「離婚」だけが人生ではないので、あまり難しく考えることもどうかと思いますが、どちらもあなたの人生にとって重要なイベントです。慎重に対応することが肝心です。


 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 新型コロナウイルスの感染拡大により、日常的に人々の権利が制限される場面が増え、その中で“憲法”の話が出てくることも増えてきたように感じます。AIRDOの飛行機に搭乗した人が、マスクの着用を拒否して飛行機を降ろされ、「憲法違反だ!」と主張したりしていました。憲法は、六法全書でも一番初めに載っている一番重要な法律です。ただ、とても重要なのに「憲法って何か、あまりわかってもらえていないな」と思ったので、今回は憲法について書きます。

 一番重要な法律と書きましたが、そもそも憲法は法律ではありません。法律とは逆のものです。国(国民の代表、立法府)が、国民が生きやすくなるように定めるルールが法律です。国民には、この自分たちの選んだ代表が定めたルールを守って生活することが望まれます。これに対して、憲法は、国(立法府、行政府、司法府)を縛るものです。国の国民に対する約束といってよいでしょうか?そのため、法律とは違って、国民の代表でも簡単には変えられません(国民に対する約束を自分で変えられることにしたら意味がないので。)。

憲法には、いろいろな権利が定められています。表現の自由とか、職業選択の自由とか、居住・移転の自由とかそういったものです。これは、国によっていろいろな権利・自由が制限されてきた歴史があるため、そのような歴史を繰り返さないように憲法で約束しているものです。憲法の約束がある限り、国は、表現の自由とか職業選択の自由とかに反する法律を定めることはできませんし、反する行為をすることもできません。

 ただ、何度もいいますが、憲法は国を縛るものです。国が、警察をして、総理大臣を批判している人を逮捕すれば憲法違反ですが、お母さんが、友達の悪口を言う子に「そんなこと言うんじゃない!」と怒っても憲法違反にはなりません。国が、「北海道の人は国会議員になれない」という法律を作ったら憲法違反ですが、お父さんが子に「国会議員になんてなるんじゃない!」と言っても憲法違反にはなりません。

 以上のとおり、憲法は、法律とは逆のものです。法律の根拠になるものです。おかしな法律が作られないように定めているものです。とても重要な決まりなので、よく読んでみてください。“国が”その決まりに反しているときは「憲法違反だ!」と言ってやってください。憲法が変えられない限り、その主張は表現の自由として保障されます(お母さんは「やめなさい!」と言うかもしれませんが。)。


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