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広瀬通月報

  岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 「とてもひどい目にあわされているんです。」「相手が悪いですよね?」「許せません!」という相談がよく寄せられます。お話を聞くと、“相手が悪い”ということはよくわかるのですが、それでも「何もできません」ということはよくあります。どうしてでしょう?


 第一に、法的に「相手が悪い」と言うためには、相手が「違法である」と言えなければなりません。たとえば、相手があなたを「拳で殴った」とか、「ナイフで切りつけた」とかいう場合は、刑法204条の要件「人の身体を傷害した」にあたる行為として、基本的には違法です。ただ、ボクシングで相手を拳で殴ったとか、お医者さんが手術で患部をナイフで切り取ったという場合は、違法とはされません(正当業務行為と言います。)。

 「子どもが自分の言う事を聞きません!」という相談がありますが、これは「悪い子」かも知れませんが、法的に「違法である」とは言えないので、法的には「何もできません」。お子さんと家族みんなで話し合うことをお勧めします。


 第二に、法的に「違法である」行為であなたの法的な「権利が侵害されている」ことが必要です。ここまで認められてはじめて、「何かできる」可能性が出てきます。

ここで、「何かできる」の「何を」請求するのかということが問題となってきます。1つ目は、金銭的な賠償(損害の補填)を求めることが考えられます。2つ目に、「違法である行為」をやめてもらうことが考えられます。

 1つ目の「違法である行為」による「権利の侵害」の補填は、交通事故の後の請求が一般的で、わかりやすいと思います。道路を制限速度以上で走行するとか、赤信号に突っ込むとか、「違法である行為」によって、あなたの車を壊すとか、あなたに怪我を負わせるとか、法的に保護されるべき「権利を侵害」したときは、壊した車の修理代とか、怪我の治療費とか、「損害の補填(金銭的な賠償)」を求めることができます。ただ、自分の運転ミスが原因なのに、相手の「違法な行為」で「権利を侵害」されたとして賠償を求められたら困るので、「違法な行為」によって「権利の侵害」が生じたか証明することが求められます(因果関係の証明)。

 これに対して、2つ目の「違法である行為」をやめてもらうことは、特許権や著作権は、法律で「侵害されそうなときは停止や予防を請求できる」となっていますが、それ以外の権利については、民法で明確な定めがなく、少し請求のハードルが高くなります。「違法な行為」によって「権利の侵害」が生じたとして損害の補填は認められましたが、「やめさせるほどの違法性ではない」として停止までは認めなかった判例があります(道路の騒音の事件でした。)。


 「悪いことをやめさせる」「悪い人に何か請求する」ことは、法律の世界でも基本的なことで、私も好きな事件です。ただ、基本的なことであるからこそ、本当に「悪いこと」「悪い人」であるのか、請求する人に本当に「悪いこと」で「権利の侵害」が生じたのかなど、慎重に判断することが必要になります。そのため、とても解決が難しい事件の1つです。ただ、やりがいがある事件でもあるので、これは「悪いことなのでは?」「悪い人なのでは?」という疑問が生じましたら、結局は、「悪いことの証拠がないから何もできません!」「権利の侵害が生じた証拠がないから何もできません!」となることもありますが、とりあえずご相談ください。

 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 法律も、みなさんが使っている日本語で書かれています。普通に使う言葉で、法律の言葉も書かれています。ただ、法律は、誰が読んでも、どんなことを書いているか、同じように伝わらなければなりません。そのため、とても気を付けて、日本語を使っています。今回は、そんな法律の中で使われている言葉についてお話しします。

 「故意又は過失」という言葉があります。「故意」も「過失」も、日常会話ではあまり使いませんが、法律の中ではよく使われます。特に「故意又は過失」というようにセットで用いられます。日常会話での「故意」は“わざと”というような意味です。法律用語では、結果の発生を認容する心理状態を「故意」と言います。「過失」は、日常会話では“しくじり”や“過ち”などを意味します。法律用語では、損害の発生が予見可能であり、それを回避すべき義務があったにもかかわらず、それを怠ったことを言います。「過失」自体は事実ではなく、その人に損害回避の義務があったかや、損害の予見が可能だったのかといった評価を根拠付ける事実が問題となります。

 法律も日常会話の言葉の理解でも何となくはわかります。「故意又は過失だったら責任を負う」とされていたら、「“わざと”か“過ち”があったら責任をとる」と考えてもなんとなく意味はあっています。ただ、この前、「私は知らなかったので、過失はありません!」とご相談を受けました。日常会話では「知らなかったので、“過ち”がない」「知らなかったので“悪く”ない」でおかしくありません。ただ、法律では、“知っていたのか知らなかったのか”は、“わざとかどうか”の「故意」の問題です。「過失」は“回避すべき義務があったか”、“予見することができたか”という“知っていたのか知らなかったのか”の前の問題です

法律の中で使われる言葉は、日常会話での意味より少しややこしいです。ただ、意味がわかってくると法律がきれいに整頓された言葉で書かれていることがわかり、とても楽しいです。弁護士は、この法律の言葉を解説することが好きなので、自分で「故意かな?」「過失かな?」と判断する前に、弁護士に相談してみてください。


 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 登記とか登録とか面倒ですね。ちょっとした買い物でも所有権は移転します。スーパーでおにぎり1個購入しても、おにぎりの所有権がスーパーから私に移転します。ただ、おにぎりが誰のものかは、重要ではありません。周りの人からしてもどうでもいいです。そのため、おにぎりの所有権の登記や登録は、必要ありません。ただ、土地や家は、その家から雪が落ちてきたら、近所の人はその家の持ち主に文句を言いたくなります。誰が、その家の所有者か知ることが必要になります。登記や登録をしておいてもわらないと困ります。

まだ、そこに人が住んでいれば住んでいる人に文句を言ったり、誰の家か聞けたりするのでまだいいです。この頃は、高齢化社会で、持ち主が亡くなった後、ちゃんと登記がされていなくて、誰に請求したらいいかわからなくて困るということが多くなってきました(空き家問題)。

 それで、令和6年4月1日から、相続で不動産を取得したとき、登記することが義務化されます。私は、登記は専門ではありませんが、備忘の意味もあり報告させていただきます。詳しくは司法書士さんにお尋ねください。

 義務化とはいえ、必ずしもしっかりした登記手続をしなければいけないということではありません(できるならした方がいいとは思いますが。)。相続しただけで、まだ自分の物になるかもわからないのに、登記の義務を課せられるとしたら重すぎます。そのため、「相続人申告登記」として、登記官に対し、「相続が開始したこと」又は「自分が相続人であること」を申告すればいいとされました。そうすると、その人について「相続人申告」がされたことが記載されるので、亡くなった人の不動産で困った人は、とりあえずその「相続人申告」をした人に連絡できるようになります。

 まだ始まったばかりの制度であり、「ちゃんと所有権移転の登記までさせなければならないのではないか」という意見もあるようなので、今後どうなるかはわかりません。ただ、これまで仕事をしていて「登記が古くて誰に連絡したらいいかわからない」と困ることがあった私といたしましては、相続人の連絡先が示されるようになるだけでもとても嬉しいです。


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